会社設立の費用の内訳を「法定費用」と「それ以外」で線引きする。どこまでが必ずかかるお金か
この記事は、こういう方に向けて書いています
会社設立の費用を調べていて、「法定費用」という言葉が出てきたけれど、どこまでが法定費用なのかがはっきりしないという方に向けた記事です。料金ページに「法定費用は別途」と書かれていて、それがいくらなのか分からない、という場面を想定しています。
法定費用とは、法律や政令で金額が決まっているお金のことです。誰が手続きをしても同じ金額がかかり、値切ることも交渉することもできません。これに対して、それ以外の費用は選び方で変わります。この線が引けると、会社設立の費用のうちどこまでが削れるのかが確定します。
この記事では、線の引き方と、線の両側にそれぞれ何があるのかを整理します。金額はすべて2026年8月22日に一次情報で確認したものです。個別の見積りではありませんので、実際の金額は司法書士・税理士にご確認ください。
「法定費用」とは、法律や政令で金額が決まっているお金のこと

会社設立の費用を扱うページには、よく「法定費用」という言葉が出てきます。法律で定められた費用という意味ですが、具体的にどの項目を指すのかは、書かれていないことがあります。
線の引き方は単純です。法律や政令で金額が決まっていて、誰が手続きをしても同じだけかかるものが法定費用。それ以外、つまり事業者や自分の選び方で金額が変わるものは法定費用ではありません。
この線を引く意味は、削れるかどうかがここで決まるからです。法定費用は、どんなに調べても、どんなに交渉しても、金額が下がりません。下げる方法があるとすれば、条件そのものを変えるしかありません。

紛らわしいのが、定款認証の「手数料」です。名前に手数料と付いていますが、公証人手数料令という政令で金額が定められているため、これは法定費用です。公証役場によって金額が違うということはありません。
逆に、司法書士の「報酬」は事務所が決めています。相場という言葉が本来の意味で使えるのはこちら側で、複数の事務所に見積りを取れば幅が見えます。法定費用の側に相場という言葉を使うのは、本当は正しくありません。
会社設立の手続きそのものの流れは、法務局が案内しています。どの段階でどの機関にお金を払うのかを見ておくと、法定費用の位置づけが分かりやすくなります。
以下では、法定費用の側を項目ごとに確定させ、そのあとで法定費用ではない側を見ます。
なお、この線引きは会計上の分類とは別です。会計では創立費や開業費といった科目で整理しますが、この記事の線引きは「削れるかどうか」を見るためのものです。
出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月22日確認)
法定費用①:登録免許税は法律で税率と下限が決まっている

法定費用の一つ目は登録免許税です。設立登記を法務局に申請するときに納める税金で、登録免許税法によって課税標準と税率が定められています。
会社設立の登記の税率は、資本金の額の1,000分の7です。ただし下限があり、計算した額がこれに満たないときは下限の額になります。株式会社は15万円、合同会社は6万円。2026年8月22日時点で、国税庁の登録免許税の税額表に記載されている内容です。
税金ですから、当然ながら値切ることはできませんし、どこで手続きをしても同じです。会社設立の費用の内訳のうち、もっとも動かしにくい項目です。
それでも、金額が変わる場面が二つあります。ひとつは資本金が大きい場合。株式会社ならおよそ2,143万円、合同会社ならおよそ857万円を超えると、下限ではなく計算額のほうが適用されて金額が上がります。
もうひとつが軽減制度です。市区町村が実施する特定創業支援等事業の支援を受け、その証明を取得すると、会社設立の登録免許税が軽減されます。中小企業庁が制度の内容を案内しています。
ただし、この制度は誰でも使えるものではありません。実施しているかどうかは自治体によりますし、原則として一定期間・一定回数の支援を受ける必要があります。証明を受けるのは、会社法上の発起人であり会社の代表者となる個人です。

軽減が使えるなら、会社設立の費用の相場が大きく変わります。株式会社なら7万5,000円、合同会社なら3万円ぶん。削れる項目の中でいちばん金額が大きいのがここです。
ただし、支援のプログラムに参加する時間がかかります。設立を急いでいる場合は間に合わないこともありますので、スケジュールと合わせて検討してください。
出典No.7191 登録免許税の税額表 (国税庁/2026年8月22日確認)
法定費用②:定款まわりの費用は、株式会社だけに発生する

法定費用の二つ目は、定款まわりの費用です。株式会社は定款を公証人に認証してもらう必要があり、その手数料と謄本の交付手数料がかかります。合同会社には定款認証の手続き自体がないため、この項目が丸ごと存在しません。
認証の手数料は公証人手数料令で定められています。資本金等の額が100万円未満なら3万円、100万円以上300万円未満なら4万円、300万円以上なら5万円。そして100万円未満のうち一定の条件を満たすものは1万5,000円です。
1万5,000円の条件は、発起人が全員自然人で3人以下、設立時発行株式の全部を発起人が引き受ける旨の定めがあり、取締役会を置く旨の定めがないことです。令和6年12月1日に施行された改正で加わった区分です。
ネット上には改定前の三区分だけを書いた解説が今も多く残っています。会社設立の費用の内訳を写すときは、必ず日本公証人連合会のページで現行の区分を確かめてください。
謄本の交付手数料は1枚250円です。登記申請用に8枚ほど必要になるため、2,000円前後になります。金額は小さいものの、内訳から抜けやすい項目です。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款の作成 | 必要 | 必要 |
| 定款の認証 | 必要 | 不要 |
| 認証の手数料 | 1万5,000円〜5万円 | なし |
| 謄本の交付手数料 | 1枚250円(8枚で2,000円前後) | なし |
| 紙の定款の収入印紙 | 4万円 | 4万円 |
※ 収入印紙は紙の定款を作った場合のみ。電子定款には貼りません。合同会社も紙で作れば印紙税は課税されます。
この表を見ると、株式会社と合同会社の会社設立の費用の差が、登録免許税だけではないことが分かります。定款認証の手数料と謄本代を足すと、最小でも1万7,000円、資本金によっては5万2,000円の差が加わります。
登録免許税の9万円とあわせると、株式会社と合同会社の法定費用の差は10万7,000円から14万2,000円ということになります。これが、会社設立の費用の相場で語られる十数万円の差の正体です。
なお、定款の認証はテレビ電話でも受けられます。公証役場まで出向く交通費は法定費用ではありませんが、実費として発生するものですから、内訳に入れるなら忘れないでください。
出典会社の定款手数料の改定 (日本公証人連合会/2026年8月22日確認)
法定費用③:紙の定款に貼る収入印紙 4万円

法定費用の三つ目は収入印紙です。定款は印紙税法の別表第一に定められた第6号文書にあたり、税額は4万円です。2026年8月22日時点で、国税庁の印紙税額の一覧表に記載されている内容です。
この項目が特徴的なのは、法定費用でありながら、発生させないことができるという点です。定款を電子データで作り、電子署名をして認証を受ける場合、紙の文書ではないため課税文書にあたらず、印紙を貼る必要がありません。
登録免許税や定款認証の手数料は、会社設立をする以上どうやっても発生します。ところが収入印紙は、作り方を変えれば発生しません。この意味で、法定費用の中では例外的な項目です。
ただし、電子定款にするには電子署名の環境が要ります。電子証明書と、それに対応した文書作成の環境を一から用意すると、4万円を超えることがあります。会社設立が一度きりなら、道具代のほうが高くつくことになります。
現実的な選択肢として多いのは、電子定款の作成だけを行政書士や司法書士に依頼する方法です。依頼料が4万円より安ければ差額が残ります。ただし料金は事務所によって異なりますので、公式ページでご確認ください。

株式会社の定款のうち、印紙税が課税されるのは公証人が保存する原本です。認証後に返ってくる謄本には印紙を貼りません。国税庁の一覧表にも、公証人の保存するもの以外は非課税文書である旨が書かれています。
会社設立の費用の相場を下げたいとき、この4万円がいちばん検討しやすい項目です。法定費用でありながら、条件を変えれば消えるからです。ただし手間が増えることは織り込んでおいてください。
出典No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで (国税庁/2026年8月22日確認)
法定費用④:登記事項証明書と印鑑証明書の交付手数料

法定費用の四つ目は、証明書の交付手数料です。設立登記が完了したあと、法人口座の開設や各種の届出のために、登記事項証明書と印鑑証明書が必要になります。手数料は登記手数料令で定められています。
法務省が公表している金額は、2026年8月22日時点で次のとおりです。令和7年4月1日に改定されました。古い金額を載せた解説が残っていますので、写す前に確かめてください。
| 証明書 | 書面請求 | オンライン請求(送付) | オンライン請求(窓口交付) |
|---|---|---|---|
| 登記事項証明書(商業・法人) | 600円 | 520円 | 490円 |
| 印鑑証明書(商業・法人) | 500円 | 450円 | 420円 |
※ 法務省「登記手数料について」に掲載されている金額です。必要な通数は提出先によって変わります。
一通あたりは数百円ですが、提出先の数だけ必要になります。法人口座の開設、税務署への法人設立届出書、都道府県税事務所と市区町村への届出、年金事務所への新規適用の届出。数通ずつ取ると合計で数千円です。
この項目は、請求の方法を変えれば少し安くなります。オンラインで請求して郵送で受け取るか、窓口で受け取るかで、書面請求より80円から110円ほど安くなります。通数が多いほど差が出ます。
なお、この費用は会社設立が終わってから発生します。設立までの支出だけを数えていると、内訳から漏れます。会社設立の費用の相場を見積もるときは、設立の翌週にもまとまった支出があることを織り込んでください。
印鑑証明書を取るには、あらかじめ法務局に印鑑を届け出ておく必要があります。設立登記の申請時に印鑑届書を出すのが一般的です。ここを忘れると、証明書を取る前にもう一度手続きが要ります。
法定費用はここまでです。合計すると、株式会社を電子定款で設立する場合は17万円前後、合同会社なら6万円台。この金額が、会社設立で必ずかかるお金ということになります。
出典登記手数料について (法務省/2026年8月22日確認)
法定費用ではないもの:ここが相場に幅を作る

線の外側、つまり法定費用ではない費用を見ます。ここは事業者が価格を決めているか、自分の選び方で決まる部分です。会社設立の費用の相場に幅があるのは、ほとんどここが理由です。
まず印鑑です。会社設立の登記には代表者印が要りますが、価格は素材と販売店によって数千円から数万円まで幅があります。銀行印と角印は登記には不要で、設立後の実務で必要になります。
次に代行手数料です。司法書士や行政書士の報酬、会社設立の代行サービスの利用料。範囲によっても金額が変わりますので、同じ範囲で見積りを取らないと比較になりません。
そして、本店に関する費用です。自宅を本店にすれば追加の費用はかかりませんが、バーチャルオフィスを使えば月額が発生します。事務所を借りるなら賃料と敷金がかかります。これは会社設立の費用というより、事業を始める費用として扱われることが多い項目です。
| 項目 | 金額の決まり方 | 会社設立に必須か |
|---|---|---|
| 代表者印 | 販売店による | 必須(登記に使います) |
| 銀行印・角印 | 販売店による | 設立後に必要 |
| 司法書士・行政書士の報酬 | 事務所による | 任意(自分でやれば不要) |
| 代行サービスの利用料 | 事業者による | 任意 |
| バーチャルオフィス・事務所 | 事業者・物件による | 本店の住所が必要(自宅でも可) |
| 会計ソフト | 事業者による | 任意(設立後の実務で使うことが多い) |
※ 特定の事業者をすすめるものではありません。金額は各社の公式ページでご確認ください。料金は改定されます。
この側の項目には、相場という言葉が本来の意味で使えます。複数の事業者の価格を並べれば、だいたいの幅が見えるからです。逆に、法定費用の側に相場という言葉を使うのは正しくありません。金額が一つしかないからです。
会社設立の費用の相場が6万円から30万円まで割れて見えるのは、この二つの側を混ぜて数えているからです。法定費用だけを数えれば6万円か17万円。代行手数料まで入れれば30万円。どちらも間違いではありません。
削るという話ができるのも、この側だけです。印鑑を代表者印だけにする、自分で手続きをする、本店を自宅にする。削れる金額は合わせて数万円から十数万円というところです。
出典会社設立時に必要な印鑑は?代表印(実印)などの種類や用途を解説 (弥生/2026年8月22日確認)
線を引いたあとの、削れる範囲の実際の大きさ

線を引いた結果、会社設立の費用のうちどれだけが削れるのかを確かめます。株式会社を電子定款で設立し、印鑑を三本そろえ、証明書を数通取る場合で見てみます。

株式会社なら約88%、合同会社でも約73%が法定費用です。削れるのは残りだけということになります。印鑑を代表者印だけにすれば1万円台は下がりますが、総額に対しては1割に届きません。
では、会社設立の費用を大きく下げる方法はないのかというと、あります。ただしそれは項目を削るのではなく、条件を変えることです。合同会社にする、電子定款にする、軽減制度を使う。この三つが効きます。
合同会社にすれば、法定費用が10万円以上下がります。電子定款にすれば4万円。軽減制度が使えれば、株式会社で7万5,000円。この三つを全部使えば、株式会社を紙の定款で設立する場合と比べて相当な差になります。
逆に、印鑑を安いものにする、証明書をオンラインで請求する、といった工夫で下がるのは数千円から一万円台です。やる価値はありますが、それで相場が変わるわけではありません。
会社設立の費用を抑えたいなら、まず条件を検討してください。項目の節約はそのあとです。順番を逆にすると、小さい金額に時間をかけることになります。
そして、代行に頼むかどうかは、金額だけでは決められません。自分でやれば手数料は0円ですが、その時間を事業の準備に使えなくなります。時間の価値をどう見るかという判断が入ります。
出典会社設立代行は自分で手続きするより安い?0円のサービスについても解説! (マネーフォワード/2026年8月22日確認)
まとめ:法定費用の線を引いてから、削る話をする

会社設立の費用の内訳に「法定費用」の線を引いて、削れる範囲を確定させました。要点をまとめます。
- 法定費用は、登録免許税・定款認証の手数料・定款の謄本・収入印紙・証明書の交付手数料。法律や政令で金額が決まっていて、誰がやっても同じです。
- 法定費用ではないのは、印鑑・代行手数料・本店の費用・会計ソフト。事業者や自分の選び方で変わります。相場という言葉が本来の意味で使えるのはこちら側です。
- 自分で手続きをする場合、総額の7割から9割が法定費用。削れるのは残りだけです。
- 大きく下げたいなら、項目ではなく条件を変える。合同会社にする、電子定款にする、軽減制度が使えるか確かめる。この三つが効きます。
- 「法定費用は別途」と書かれた料金は、表示額に法定費用を足したもの。株式会社なら17万円前後を足して考えてください。
金額をもう一度整理します。いずれも2026年8月22日に一次情報で確認したものです。登録免許税は株式会社が下限15万円、合同会社が下限6万円。定款認証の手数料は1万5,000円から5万円。定款の謄本は1枚250円。紙の定款の収入印紙は4万円。登記事項証明書は書面請求600円、印鑑証明書は500円。
これらは改定されます。とくに定款認証の手数料は令和6年12月に区分が増え、証明書の手数料は令和7年4月に改定されています。古い金額を載せた解説が今も多く残っていますので、必ずリンク先で確かめてください。
そして、設立時の法定費用は一度きりですが、設立後には毎年かかる費用があります。法人住民税の均等割は標準税率で年7万円、赤字でもかかります。決算申告と社会保険を足すと、年20万円から40万円ほどになることが多くなります。
会社設立の費用の内訳を線引きしてみると、削れる金額は思ったより小さいという結論になります。だからこそ、設立後に毎年出ていくお金のほうに目を向けたほうが、総額としては効きます。
この記事は一般的な費用の解説であり、個別の見積りではありません。条件が変われば金額も変わります。具体的な判断は税理士・司法書士・行政書士にご相談ください。
出典会社設立の費用はいくら?株式会社と合同会社の維持費もわかりやすく解説 (freee/2026年8月22日確認)
線を引いてから、削る話をしてください
会社設立の費用を安く抑えたいと考えたとき、最初にやるべきは節約の方法を探すことではありません。法定費用の線を引いて、削れない範囲を確定させることです。線の内側は何をしても動きませんから、そこに時間をかけても無駄になります。
線を引いてみると、株式会社なら総額の8割以上、合同会社なら6割以上が法定費用だと分かります。削れるのは残りだけで、金額としては数万円です。この数万円のために何日も調べるかどうかは、時間の使い方の判断になります。
この記事の金額は2026年8月22日時点のものです。手数料も税率も改定されます。出典としてリンクした各機関のページで最新の金額を確かめ、判断そのものは専門家にご相談ください。
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