会社設立の費用で、削ってはいけないところ。安くした結果あとで高くつく五つの場面
この記事は、こういう方に向けて書いています
会社設立の費用を抑える方法をひととおり調べて、どこまで削ってよいのかの線を知りたい方に向けた記事です。安くする方法は分かったが、やりすぎて困らないかが気になる、という段階を想定しています。
この記事では、削った結果あとで高くつく場面を五つ挙げます。どれも、その場では数千円から数万円しか浮かないのに、あとから数万円から十数万円の支出になって返ってくるものです。
金額は2026年8月22日に一次情報で確認したものです。個別の見積りではありません。どこまで削るべきかという判断は、事業の計画とあわせて司法書士・税理士にご相談ください。
削ってよいものと、削ってはいけないものの線引き

会社設立の費用を安く抑えるとき、削ってよいものと、削ってはいけないものがあります。線引きは単純です。
あとから直せるものは削ってよい。あとから直すのに登記が要るものは削らない。登記が絡むと、そのつど登録免許税がかかるからです。
たとえば印鑑は、代表者印だけ作って銀行印と角印をあとで足せます。証明書も、必要になったときに取ればよい。これらは削ってもあとから困りませんし、相場に対する影響も小さい項目です。
一方、資本金の額、事業目的、本店の所在地は登記事項です。設立のときに決めておけば追加の費用はかかりませんが、あとから変えるには変更登記が必要で、登録免許税がかかります。

もうひとつ、削ると信用に関わるものがあります。資本金を極端に小さくする、本店をよく調べずに決める。これらは金額ではなく、あとの取引に効いてきます。
会社設立の手続きと、変更の登記の手続きは、いずれも法務局が案内しています。あとから変えるとどんな手続きが要るのかを先に見ておくと、削ってよいかどうかの判断がしやすくなります。
以下、削ってはいけない五つを順に挙げます。
出典商業・法人登記申請手続 (法務局/2026年8月22日確認)
削ってはいけない①:資本金を極端に小さくする

いちばんよく見かけるのが、資本金を1円にするという話です。会社設立の費用の相場を下げる方法として紹介されることがありますが、実際にはほとんど下がりません。
登録免許税には下限があります。株式会社は15万円、合同会社は6万円。資本金が株式会社で約2,143万円、合同会社で約857万円を超えるまでは、資本金がいくらでも税額は同じです。2026年8月22日時点の国税庁の登録免許税の税額表による内容です。
下がるのは株式会社の定款認証の手数料だけです。資本金等の額を100万円未満にすれば、条件しだいで1万5,000円から3万円の区分になります。300万円以上との差は最大3万5,000円。合同会社ならゼロです。
相場に対して3万5,000円しか動かないのに、そのために資本金を極端に小さくすると、あとで不利になりうることが指摘されています。法人口座の開設、許認可の要件、取引先の与信。資本金は会社の登記事項として公開される数字です。
また、資本金は当面の運転資金でもあります。1円で設立すると、会社にお金がない状態から始まります。代表者が立て替えて経費を払い、あとで精算するという形になりますが、帳簿の管理が煩雑になります。
あとから資本金を増やすには、増資の登記が必要です。登録免許税がかかります。設立のときに適切な額にしておけば、この費用は発生しません。

逆に、資本金を1,000万円以上にすると、設立初年度から消費税の納税義務が生じる場合があります。法人住民税の均等割も、資本金等の額が1,000万円を超えると区分が上がります。上げすぎにも注意が要ります。
資本金は、当面の運転資金として必要な額から決めてください。会社設立の費用の相場を下げるために資本金を決める、という考え方は成り立ちません。
出典資本金とは?会社設立時はいくらに設定すべき?最低金額や決め方、払込時期などを解説 (マネーフォワード/2026年8月22日確認)
削ってはいけない②:事業目的を減らしすぎる

定款に書く事業目的を減らすと、定款が短くなって謄本の枚数が減ります。ただし、下がる金額は数百円です。
定款の謄本は1枚250円で、登記申請用に8枚ほど必要になります。事業目的を数行減らしても、枚数が1枚減るかどうかというところです。2026年8月22日時点で、日本公証人連合会が案内している金額です。
一方、あとから事業目的を追加するには変更登記が必要で、登録免許税がかかります。司法書士に頼めば報酬の相場も加わります。数百円の節約のために、あとで数万円かかるかもしれません。
ですから、将来やる可能性のある事業は、最初に書いておくほうが安く済みます。会社設立のときに書いておけば、追加の費用はかかりません。
ただし、書きすぎると別の問題が出ます。許認可が必要な事業では、目的の書き方が要件に合っているかを審査されます。また、目的が多すぎると「何をしている会社か分からない」と取引先や金融機関に見られることがあります。
節約と、会社の見え方のバランスを考えて決めてください。数を絞るなら、当面やる事業と、数年以内にやる可能性のある事業までを目安にするのが現実的です。
商号についても同じことが言えます。同一の所在場所に同一の商号がある場合は登記できません。法務省がオンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について案内していますので、決める前に確かめてください。
商号を変えるにも変更登記が必要です。設立のときに確かめておくことが、いちばん確実な節約になります。
出典オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について (法務省/2026年8月22日確認)
削ってはいけない③:本店の場所をよく調べずに決める

本店の所在地は登記事項です。自宅にすれば追加の費用はかかりませんが、あとから移転するには変更登記が必要で、登録免許税がかかります。
とくに、管轄する法務局をまたぐ移転かどうかで手続きと金額が変わります。引っ越しの予定がある方は、この点を織り込んでおいてください。
もうひとつ、本店の場所は法人住民税の均等割にも効きます。総務省が公表している標準税率では年7万円ですが、超過税率を設けている自治体もあります。均等割は自治体ごとに相場が違う費用だ、という言い方もできます。毎年のことですので、積み重なります。
賃貸物件を本店にする場合は、賃貸借契約を確かめてください。事業用の利用が禁止されている契約だと、あとで問題になることがあります。費用の話ではありませんが、あとで移転が必要になれば費用の話になります。
バーチャルオフィスを使う場合は、月額の費用が発生します。相場は事業者によって異なりますので、公式ページでご確認ください。安さだけで選ぶと、法人口座の開設や許認可で不利になることがあると指摘されています。

会社設立の費用を抑えるために自宅を本店にするのは、合理的な選択です。ただし、上の五つを確かめてから決めてください。確かめずに決めると、あとで移転することになります。
なお、自宅を本店にすると、住所が登記事項として公開されます。費用の話ではありませんが、判断材料の一つです。
出典本店所在地とは?会社設立時にどこの住所を本店所在地として法人登記すべき? (マネーフォワード/2026年8月22日確認)
削ってはいけない④:印鑑をまったく作らない

印鑑については、削ってよい部分と削ってはいけない部分があります。
削ってよいのは、銀行印と角印です。会社設立の登記には要りません。設立後に必要になったときに足せます。
削ってはいけないのは、代表者印(合同会社なら代表社員印)です。設立登記のオンライン申請では印鑑の届出が任意になっていますが、実務では法人の実印がないと契約や口座開設で困る場面が多くあります。
印鑑証明書を取るには、あらかじめ法務局に印鑑を届け出ておく必要があります。届け出ていなければ、印鑑証明書そのものが取れません。法人口座の開設で求められることが多い書類です。
価格の相場は素材と販売店によって数千円から数万円まで幅があります。いちばん安いものでも構いませんが、作らないという選択は現実的ではありません。
もうひとつ、印鑑は発注してから届くまでに数日かかります。商号が決まらないと彫れませんので、商号を決めた直後に発注するのが工程としては無難です。ここを後回しにすると、設立の日程がずれます。
会社設立の費用の相場の中では、印鑑は小さい項目です。総額の1割前後。ここを削っても相場はあまり変わらないのに、削ると手続きが止まるという、割に合わない項目でもあります。
なお、印鑑の届出をしない場合でも、電子証明書を取得すれば電子的に手続きを進められます。ただしこちらにも費用がかかりますし、取引先が押印を求める場面には対応できません。
出典会社設立時に必要な印鑑は?代表印(実印)などの種類や用途を解説 (弥生/2026年8月22日確認)
削ってはいけない⑤:専門家への相談をまったくしない

会社設立の費用を抑えるために、専門家にまったく相談しないという選択があります。手数料は0円になりますが、判断を誤ったときの影響は大きくなります。
とくに、資本金の額、決算期の設定、消費税の判定。この三つは設立のときに決めることで、あとから変えるのに手間がかかるか、変えられません。
資本金を1,000万円以上にすると、設立初年度から消費税の納税義務が生じる場合があります。国税庁が新規開業または法人の新規設立のときの取扱いを案内しています。設立してから気づいても、その事業年度は変えられません。
決算期の設定も同じです。あとから変えることはできますが、定款の変更と届出が必要です。設立のときに決めておくほうが手間がかかりません。
これらは税理士に相談する価値がいちばん高い部分です。相談だけなら、初回無料としている事務所もあります。日本税理士会連合会が運営する税理士情報検索サイトで、登録されている税理士を確認できます。
また、法務局は登記の手続きについて相談窓口を設けています。書類の書き方に迷ったら、ここを使うこともできます。費用はかかりません。
創業支援については、市区町村が実施している場合があります。特定創業支援等事業の支援を受けると、登録免許税の軽減の対象になることもあります。中小企業庁が制度の内容を案内しています。
「相談する=お金がかかる」ではありません。無料の窓口を使うだけでも、判断を誤る可能性は下がります。会社設立の費用を抑えたいなら、ここは削らないでください。
出典税理士情報検索サイト (日本税理士会連合会/2026年8月22日確認)
削ってよいものを、あらためて整理する

削ってはいけないものを見てきましたので、逆に削ってよいものをあらためて整理します。
| 項目 | 削ったときに下がる金額 | あとから足せるか |
|---|---|---|
| 銀行印・角印 | 数千円〜 | 足せます(設立後に必要になります) |
| 証明書の通数 | 1通あたり数百円 | 足せます(必要なときに取ります) |
| 会計ソフト | 事業者による | あとから始められます |
| 代行手数料(自分でやる) | 事務所による | —(自分でやるかどうかの選択) |
| 紙定款をやめる(電子定款) | 4万円 | —(設立時に決めます) |
| 合同会社にする | 10万7,000円〜14万2,000円 | 組織変更は可能ですが登記の費用がかかります |
※ 金額は2026年8月22日に一次情報で確認した実費から計算した目安です。代行手数料と会計ソフトの利用料は事業者によって異なります。
上の四つは、あとから足せる項目です。設立の時点で削っても、困ることはありません。ただし効果は数千円から一万円台で、相場を動かすほどではありません。
下の二つは設立時にしか決められませんが、効果は大きくなります。電子定款で4万円、合同会社で10万7,000円から14万2,000円。会社設立の費用の相場を動かすのはこちらです。相場の下端に届くかどうかは、この二つで決まります。
こうして並べると、削ってよいもので大きく効くのは条件を変える二つだけだと分かります。細かい項目を削っても、総額はあまり変わりません。
ですから、会社設立の費用を抑えたいなら、まず会社の種類と定款の形を検討してください。そのあとで、余力があれば細かい項目を見るという順番です。
そして、削ってはいけない五つには手を出さないでください。資本金、事業目的、本店の場所、印鑑、専門家への相談。その場で浮く金額より、あとで返ってくる金額のほうが大きくなります。
出典会社設立の費用はいくら?株式会社と合同会社の維持費もわかりやすく解説 (freee/2026年8月22日確認)
削らずに済ませる、いちばん確実な方法

最後に、会社設立の費用を抑えるうえでいちばん確実な方法を書きます。やり直しをしないことです。
定款に不備があれば作り直しになります。紙の定款なら収入印紙も貼り直しです。登記の書類に不備があれば法務局から補正を求められ、日数が延びます。
手数料は値切れませんが、二度払わずに済ませることはできます。これは節約というより、余計な支出をしないという話です。

株式会社の場合、多くの公証役場が事前に定款の案文を確認してくれます。この事前確認を使うかどうかで、当日の手戻りが大きく変わります。費用はかかりません。
合同会社には定款認証がありませんので、この確認の機会がありません。自分で作るなら、絶対的記載事項の抜けはとくに慎重に確かめてください。
法務局は申請書の様式と記載例を、会社の種類ごとに公開しています。自分でやる場合は、この記載例と自分の書類を並べて確かめてください。
会社設立の費用の相場を数万円下げる工夫より、一度で通すことのほうが確実に効きます。やり直しになれば、相場より高い金額を払うことになるからです。
出典商業・法人登記の申請書様式 (法務局/2026年8月22日確認)
まとめ:あとから直すのに登記が要るものは削らない

会社設立の費用で削ってはいけないところを、まとめます。
- 資本金を極端に小さくする。会社設立の費用はほとんど下がりません(合同会社ならゼロ)。法人口座、許認可、与信で不利になりうるうえ、増資には登記の費用がかかります。
- 事業目的を減らしすぎる。謄本代は数百円しか変わりません。あとから追加するには変更登記が必要で、登録免許税がかかります。
- 本店の場所をよく調べずに決める。移転には変更登記が必要です。均等割の税率も自治体によって変わります。
- 印鑑をまったく作らない。代表者印がないと契約や口座開設で困ります。銀行印と角印はあとから足せます。
- 専門家への相談をまったくしない。資本金・決算期・消費税の判定は設立時に決めることで、あとから変えにくい部分です。無料の窓口もあります。
線引きは単純です。あとから直せるものは削ってよく、あとから直すのに登記が要るものは削らない。登記が絡むと、そのつど登録免許税がかかります。
金額をもう一度整理します。いずれも2026年8月22日に一次情報で確認したものです。登録免許税は株式会社が下限15万円、合同会社が下限6万円。定款認証の手数料は1万5,000円から5万円。定款の謄本は1枚250円。法人住民税の均等割は標準税率で年7万円(自治体により異なります)。
そして、会社設立の費用の相場を大きく下げるのは、会社の種類と定款の形の二つです。細かい項目を削っても、総額はあまり変わりません。
最後にもうひとつ。やり直しをしないことが、いちばん確実な節約です。事前の確認に費用はかかりませんが、やり直しには費用がかかります。
この記事は一般的な費用の解説であり、個別の見積りではありません。どこまで削るべきかという判断は、事業の計画とあわせて税理士・司法書士・行政書士にご相談ください。
出典会社設立の費用はいくら?株式会社と合同会社の維持費もわかりやすく解説 (freee/2026年8月22日確認)
あとから直すほうが高くつきます
会社設立の費用を削るときの基準は単純です。あとから直せるものは削ってよく、あとから直すのに登記が要るものは削らない。登記が絡むと、そのつど登録免許税がかかります。
資本金、事業目的、本店の場所。この三つは登記事項です。設立のときに決めておけば費用はかかりませんが、あとから変えるには登記が要ります。設立のときにきちんと考えることが、いちばん確実な節約になります。
この記事の金額は2026年8月22日時点のものです。手数料も税率も改定されます。出典としてリンクした各機関のページで最新の内容を確かめ、判断そのものは専門家にご相談ください。
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