会社設立の費用を創立費にすると、決算書はどう見えるか。融資審査での読まれ方
この記事は、こういう方に向けて書いています
会社設立の費用を創立費に入れたあとで、貸借対照表に「創立費」が資産として並んでいるのを見て気持ち悪くなった方に向けた記事です。払ったものが資産になっている、という状態です。
そして、創業融資を申し込む予定がある方。この決算書が金融機関に読まれます。どう読まれるのかを知っておくと、説明の準備ができます。
この記事では、勘定科目の選び方が決算書の見え方をどう変えるかを扱います。内容は2026年8月23日に確認したものです。個別の判断は税理士にご相談ください。
創立費は、貸借対照表の資産の部に載る

会社設立の費用を創立費に入れると、その金額は貸借対照表の資産の部に載ります。損益計算書ではありません。
位置は、資産の部の一番下です。流動資産、固定資産、そして繰延資産という並びになります。
繰延資産は、支出の効果が後の期にも及ぶものをいったん資産として置いておくものでした。国税庁は法人税基本通達の第8章第1節で繰延資産の意義と範囲を示しています。2026年8月23日に確認した内容です。
だから、会社設立の費用を払っただけでは費用になっていません。償却して初めて費用になります。

この図でわかるのは、会社設立の費用を払っても、資産の合計は減らないということです。現金が減って、繰延資産が増えるだけです。
だから、会社設立の直後の決算書は、利益も損失も出ていない状態になり得ます。何もしていないのだから当然です。
問題は、この繰延資産が外からどう見えるかです。
会社設立の費用の相場が株式会社で20万円前後なら、繰延資産も20万円前後。資本金100万円の会社なら、資産の2割です。
資本金が小さいほど、この割合は大きくなります。
出典第1節 繰延資産の意義及び範囲等(法人税基本通達) (国税庁/2026年8月23日確認)
繰延資産は「実質的な資産ではない」と読まれる

金融機関が決算書を見るとき、繰延資産は資産から差し引いて考えることがあります。
理由は、換金できないからです。現金や売掛金は回収できます。建物や機械は売れます。創立費は売れません。
だから、「実質的な純資産はいくらか」を計算するときに、繰延資産を資産から除きます。実質純資産という言い方をします。
| 項目 | 帳簿上 | 実質での評価 |
|---|---|---|
| 現金・預金 | そのまま | そのまま |
| 売掛金 | そのまま | 回収可能性を見ます |
| 繰延資産(創立費) | 資産に計上 | 差し引かれることがあります |
| 役員借入金 | 負債 | 資本とみなされることがあります |
※ 金融機関や審査の場面によって扱いが異なります。一般的な傾向です。
会社設立の費用の相場が20万円前後なら、差し引かれても20万円です。資本金が100万円あれば、実質純資産は80万円。大きな問題にはなりません。
問題になるのは、資本金が極端に小さい場合です。資本金1円で会社設立をして、創立費20万円を計上すると、実質純資産はマイナスになります。
つまり、帳簿上は債務超過でなくても、実質では債務超過と読まれることがあるということです。
これは、会社設立の費用の相場を抑えることばかり考えて資本金を削った場合に起きます。節約が別のところに影響します。
ここで一つ、抑えることで手放すものにも触れておきます。資本金は1円でも会社設立ができます。用意する自己資金は最小で済みます。
そのかわり、創業融資の審査で自己資金の額を見られます。日本政策金融公庫の調査では、開業時の自己資金は平均279万円でした。2026年8月23日に確認した数字です。
資本金1円は、その平均から大きく外れます。説明を求められると考えておいてください。
出典創立費・開業費とは?費用の範囲・会計処理・節税効果を税理士が解説 – Relyne会計事務所 (Relyne会計事務所/2026年8月23日確認)
償却するかどうかで、決算書の見え方が変わる

会社設立の費用を創立費に入れた場合、償却するかしないかを毎期選べます。任意償却です。
この選択が、決算書の見え方を変えます。償却すれば費用が増えて赤字が深くなり、繰延資産は消えます。
償却しなければ赤字は浅いままで、繰延資産が残ります。どちらがよく見えるか、というと難しいところです。

税額の面では、赤字の年に償却しないほうが有利でした。利益が出た年に落とせるからです。
決算書の見え方では、どちらとも言えません。赤字が浅いほうがよく見えるという考え方もあれば、繰延資産が残っているほうが実質を疑われるという考え方もあります。
結論としては、税額の有利さで決めてください。見え方のために税額を捨てるのは、順番が逆です。
そして、聞かれたら説明すればよいだけです。「初年度が赤字なので、利益が出た年に落とす予定です」で通ります。
会社設立の費用の相場が20万円前後という規模なら、決算書の判断に影響する額ではありません。金融機関も気にしません。
気にされるのは、繰延資産が数百万円ある場合です。開業費で大きな広告を打った、といったケースです。
その場合は、内訳を説明できるようにしておいてください。何に使ったのか、効果はあったのか。
出典創立費の償却方法は?開業費との違いや仕訳・勘定科目、節税効果などを解説 | マネーフォワード クラウド会社設立 (マネーフォワード/2026年8月23日確認)
役員借入金は、資本とみなされることが多い

会社設立の費用を代表者が立て替えて、返さずに残した場合。役員借入金として負債に載ります。
負債が増えるので、決算書の見た目は悪くなるように思えます。ただ、実際にはそう読まれません。
金融機関は、代表者からの借入金を実質的な資本とみなすことが多いとされています。返済を迫られる負債ではないからです。
だから、会社設立の費用を役員借入金にしておくことで、融資審査で不利になることは少ないと考えられます。
- 役員借入金実質的な資本とみなされることが多い
- 金融機関からの借入金返済義務のある負債として見られます
- 買掛金・未払金短期の負債。回転を見られます
- 繰延資産資産から差し引かれることがあります
ただし、金額が大きいと説明を求められます。会社設立の費用の相場20万円程度なら問題になりませんが、数百万円あれば話が変わります。
それから、役員借入金は相続のときに問題になることがあります。会社に対する債権として、相続財産に含まれるためです。
会社設立の直後に考える話ではありませんが、長く残すと膨らみます。返せるときに返しておくほうが後々楽です。
返すときに税金はかかりません。借りたお金を返すだけだからです。役員報酬として出すと所得税と社会保険がかかりますが、こちらは違います。
だから、会社設立の費用を立て替えて役員借入金にしておくのは、あとから税負担なしで資金を回収できる枠を作っておくことでもあります。
会社設立の費用の相場が20万円なら、その20万円を非課税で回収できる。小さな話ですが、覚えておいて損はありません。
出典開業前に支払った経費の仕訳は?(法人)| 決算・申告、業務の流れ(法人) サポート情報 (弥生/2026年8月23日確認)
創業融資の審査で、決算書はまだ存在しない

ここまで決算書の話をしてきましたが、会社設立の直後に創業融資を申し込む場合、決算書はまだありません。
見られるのは、事業計画と自己資金と経歴です。決算書が効いてくるのは、1期目が終わってからです。
日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」によると、開業時の資金調達額は平均1,219万円。うち金融機関等からの借り入れが平均827万円で67.9%、自己資金が平均279万円で22.9%です。2026年8月23日に確認しました。
つまり、自己資金が2割強あって、7割弱を借りるというのが平均的な形です。

会社設立の費用は、借りたお金では払えません。会社が存在しないと融資を受けられないからです。順番として、自己資金から出すことになります。
だから、会社設立の費用の相場である20万円前後は、手元に用意しておく必要があります。
そして、その20万円をどう記録するかが、1期目の決算書に出てきます。創立費として資産に残すか、償却して費用にするか。
2期目に追加の融資を申し込むとき、その決算書が見られます。そのときに説明できる状態にしておいてください。
会社設立の費用の相場を調べる段階では遠い話に思えますが、帳簿は連続しています。最初の処理が、あとで読まれます。
出典新規開業に関する調査|日本政策金融公庫 (日本政策金融公庫総合研究所/2026年8月23日確認)
科目を分けておくと、説明が早く終わる

会社設立の費用をまとめて創立費に入れるか、租税公課や支払手数料に分けるか。税額は変わりません。
違いが出るのは、説明を求められたときです。分かれていれば、内訳をすぐ示せます。
金融機関から「この繰延資産は何ですか」と聞かれたときに、「会社設立の費用です。登録免許税15万円、定款認証1万5,000円、その他」と答えられる。
まとめて創立費にしていると、帳簿を見返して内訳を作ることになります。手間が後ろにずれるだけです。
| やり方 | 入力の手間 | 説明の手間 |
|---|---|---|
| まとめて創立費 | 少ない | 内訳を作り直す必要があります |
| 科目を分ける | 少し増える | そのまま示せます |
| 補助科目を使う | 少し増える | 創立費のまま内訳を持てます |
※ 会計ソフトによって補助科目の呼び方が異なります。
おすすめは、創立費のまま補助科目で分けるやり方です。貸借対照表では創立費ひとつにまとまり、内訳は残ります。
会社設立の費用は多くても10件程度ですから、補助科目を作る手間も小さい。
それから、創立費と開業費は分けておいてください。登記の前か後かで機械的に分かれるので、判断が楽です。
この二つを分けておくと、会社設立にいくらかかったかを後から取り出せます。相場と自社の実額を比べたいときに役立ちます。
会社設立の費用の相場は株式会社で16万円台から、合同会社で6万円台から。自社がいくらだったかを知っておくと、次に会社を作るときの参考になります。
そして、内訳を持っておくと、税理士に引き継ぐときも早い。決算を自分でやっていて、途中から頼むことになった場合に効いてきます。
出典創立費と開業費の税務 – 渋谷区恵比寿で税理士なら粕谷税理士事務所 (粕谷税理士事務所/2026年8月23日確認)
決算書に毎年出てくるのは、設立後の固定費のほう

会社設立の費用は、決算書に出てくるのは最初の何期かだけです。償却が終われば消えます。
それに対して、毎年必ず出てくる項目があります。こちらのほうが、決算書の中では大きくなっていきます。
- 法人住民税の均等割租税公課。赤字でも年7万円が下限です
- 社会保険の会社負担法定福利費。役員報酬のおよそ15%
- 税理士の顧問料支払報酬。年20万円から40万円ほど
- 法人税・住民税・事業税法人税等。利益が出れば発生します
均等割の年7万円は、会社設立の費用の相場が合同会社で6万円台であることを考えると、毎年それを超える額です。
社会保険の会社負担はもっと大きい。役員報酬を月30万円にすると、会社の負担分だけで年間50万円を超えます。
10年続ければ、この二つだけで数百万円になります。会社設立の費用の相場20万円とは、桁が二つ違う話です。
そして、これらは決算書に毎年並びます。金融機関が見るのも、こちらのほうです。
会社設立の費用をどの科目に入れるかで悩む時間があるなら、役員報酬をいくらにするかを考えるほうが、金額としてはるかに大きい。
役員報酬は定期同額給与のルールがあるので、会社設立から3か月以内に決めて、そのあと1年間は変えられません。
つまり、会社設立の直後の判断が1年分の負担を決めます。勘定科目は後から直せますが、役員報酬は直せません。
この設計を独学で全部押さえるのは、正直しんどい。任せられる相手を持っておくほうが、結局は安くつくことがあります。
出典開業費とは?開業後に支払ったものは費用にできるのか解説! (SoVa/2026年8月23日確認)
まとめ:正しく処理して、説明できるようにしておく

会社設立の費用の科目と決算書の見え方について、まとめます。
- 創立費は貸借対照表の資産の部、繰延資産として載ります
- 金融機関は繰延資産を資産から差し引いて考えることがあります
- 資本金が極端に小さいと、実質で債務超過に見えることがあります
- 役員借入金は、実質的な資本とみなされることが多いです
- 償却するかどうかは、税額の有利さで決めてください
大事なのは、見え方のために処理を曲げないことです。正しく処理して、聞かれたら説明する。それで足ります。
- 繰延資産の扱い
- 換金できないので、評価は低くなります
- 資本金
- 小さすぎると実質純資産がマイナスに見えます
- 役員借入金
- 返済に期限がなく、資本とみなされやすい
- 内訳
- 補助科目で持っておくと、説明が早く終わります
会社設立の費用の相場が株式会社で16万円台から、合同会社で6万円台から。この規模なら、決算書の判断に影響する額ではありません。
それより、設立後に毎年かかる費用のほうが決算書に効いてきます。均等割は赤字でも年7万円、社会保険の会社負担は役員報酬のおよそ15%。
会社設立の費用を数万円抑えることに時間をかけるより、その毎年の設計に時間をかけたほうが、総額では効いてきます。
この記事の内容は2026年8月23日時点のものです。制度は改正されます。個別の判断は、必ず税理士にご相談ください。
出典第1節 繰延資産の意義及び範囲等(法人税基本通達) (国税庁/2026年8月23日確認)
見え方を変えるために科目を選ぶのは、順番が逆です
決算書の見え方を良くしたいから創立費にする、償却しない。その発想は避けてください。正しい処理をしたうえで、説明できる状態にしておくのが順番です。
会社設立の費用を創立費に入れて償却していないなら、「初年度が赤字なので、利益が出た年に落とす予定です」と言えばよいだけです。それで通ります。
この記事の内容は2026年8月23日時点のものです。制度は改正されます。判断そのものは税理士にご相談ください。
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