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会社設立 費用 社会保険

一人で会社設立をしても社会保険に入るのか。役員報酬ゼロにした場合の費用

この記事は、こういう方に向けて書いています

一人で会社設立をしようとしていて、社会保険に入らなければならないのかが気になっている方に向けた記事です。従業員がいないのだから要らないのでは、と思うのは自然です。

そして、役員報酬をゼロにして社会保険を避けるという話を聞いて、それができるのかを知りたい方にも。

この記事では、加入義務と、報酬ゼロの選択について整理します。内容は2026年8月23日に確認したものです。個別の判断は社会保険労務士または税理士にご相談ください。

法人は、役員が一人でも社会保険の強制適用

法人は、役員が一人でも社会保険の強制適用を表したイラスト

結論から書きます。法人は、役員が一人であっても社会保険の強制適用です。従業員がいるかどうかは関係ありません。

日本年金機構が新規適用の手続きを案内しています。2026年8月23日に確認しました。会社設立をしたら、届出が必要です。

個人事業とは扱いが違います。個人事業なら、従業員が常時5人未満なら任意適用です。法人は、規模に関係なく強制適用になります。

これが、会社設立をするかどうかの判断で効いてくる点のひとつです。個人事業のままなら国民健康保険と国民年金、会社にすれば厚生年金と健康保険になります。

個人事業と会社での社会保険の違いを並べた比較図
会社にすると、社会保険の枠組みが変わります

労使折半といっても、一人会社では両方が自分です。会社が払う分も、結局は自分の会社のお金です。

だから、一人会社では保険料の全額を実質的に負担していることになります。折半という言葉に惑わされないでください。

会社負担は損金になります会社が負担する社会保険料は、法定福利費として損金になります。個人事業で払う国民健康保険料も所得控除の対象なので、この点では大きな差にはなりません。

会社設立の費用の相場は、株式会社で16万円台から、合同会社で6万円台から。社会保険は、これとは別に毎月かかります。

役員報酬30万円なら、会社負担は年52万円ほど。会社設立の費用の3倍以上です。

以下、役員報酬をゼロにした場合を見ていきます。

会社設立の費用の相場を調べているときには、社会保険の話まで出てこないことが多い。設立の費用と、設立後の費用は、別の記事に分かれているからです。

けれど、判断としてはつながっています。会社設立をするかどうかは、設立の費用ではなく、設立後にかかる費用で決まる部分が大きい。社会保険はその代表です。

出典新規適用の手続き (日本年金機構/2026年8月23日確認)

役員報酬がゼロなら、社会保険には入らない

役員報酬がゼロなら、社会保険には入らないを表したイラスト

では、役員報酬をゼロにしたらどうなるか。

社会保険料は、報酬をもとに計算します。報酬がなければ、計算しようがありません。

実務上は、役員報酬がゼロの場合、被保険者の資格を取得しないという扱いになります。会社としての適用事業所の届出は必要でも、加入する人がいない状態です。

つまり、役員報酬をゼロにすれば、社会保険料はかかりません。これは事実です。

ただし、そのぶん何を手放すかを見てください。

  • 会社から生活費を取れない役員報酬がゼロなので、当然です
  • 国民健康保険と国民年金に自分で入る市区町村で手続きします
  • 将来の年金が基礎年金だけになる厚生年金の期間が積み上がりません
  • 傷病手当金などが使えない健康保険の給付が受けられません

一番大きいのは、会社から生活費を取れないことです。役員報酬がゼロなら、生活費は別の収入でまかなうことになります。

配偶者の扶養に入っている、他に収入がある、貯蓄で当面しのげる。そういう状況でなければ、この選択は取れません。

それから、国民健康保険と国民年金は、自分で全額を払います。国民年金保険料は定額で、国民健康保険料は前年の所得で決まります。

前年に所得があれば、国民健康保険料は年数十万円になることもあります。社会保険を避けたつもりが、そちらで払うことになります。

会社設立の費用の相場を数万円下げるのと違って、ここは差し引きで損得が変わります。単純に「安くなる」とは言えません。

会社設立の費用は、電子定款にすれば4万円安くなり、合同会社にすればさらに10万円安くなります。どちらも、確実に安くなります。

社会保険は違います。避けたぶんが、別のところに出てきます。国民健康保険料、国民年金保険料、そして将来の年金の減少。差し引きで得になるとは限りません。

出典一人社長も社会保険の加入義務はある?会社設立時の手続きと必要書類 (弥生/2026年8月23日確認)

報酬ゼロと、報酬ありを金額で比べる

報酬ゼロと、報酬ありを金額で比べるを表したイラスト

金額で比べてみます。役員報酬30万円の場合と、ゼロの場合。

報酬30万円なら、社会保険の会社負担が月4万3,000円ほど、本人負担も同じくらい。合わせて月8万6,000円ほどが出ていきます。

厚生年金保険料は、標準報酬月額30万円で全額5万4,900円。日本年金機構の令和8年度保険料額表による金額です。2026年8月23日に確認しました。

報酬ゼロなら、社会保険料はかかりません。そのかわり、国民年金と国民健康保険です。

役員報酬30万円と、報酬ゼロの比較
項目 報酬30万円 報酬ゼロ
厚生年金・健康保険 月8万6,000円ほど(労使合計) 0円
国民年金 0円 定額の保険料がかかります
国民健康保険 0円 前年の所得によります
会社から取れる生活費 月30万円 0円
将来の年金 基礎年金+厚生年金 基礎年金のみ

※ 国民年金・国民健康保険の金額は、居住地と前年の所得によって変わります(2026年8月23日時点)。

この表でわかるのは、単純な金額の比較ができないということです。

報酬ゼロにすれば会社の負担は減りますが、会社から生活費を取れません。生活費を別のところから出す必要があります。

それに、将来の年金が基礎年金だけになります。厚生年金の期間が積み上がりません。

会社設立の直後で売上が立っていない時期だけ報酬ゼロにする、というのは現実的な選択です。生活費は貯蓄でしのぐ。

ただ、ずっと報酬ゼロというのは、会社を持つ意味を問い直すことになります。

会社設立の費用を払って会社を作ったのに、そこから生活費を取れない。それでも会社にする理由があるか、という問いです。

取引先が法人としか契約しない、許認可に法人格が必要、有限責任にしたい。そういう理由があるなら、報酬ゼロでも会社にする意味はあります。節税だけが理由なら、考え直す余地があります。

会社設立の費用の相場を調べているときには、こういう選択があること自体を知らないものです。知ったうえで選ぶかどうかが大事です。

出典厚生年金保険の保険料 (日本年金機構/2026年8月23日確認)

報酬を少額にするという選択

報酬を少額にするという選択を表したイラスト

報酬ゼロと満額のあいだに、少額にするという選択があります。

厚生年金保険の標準報酬月額の下限は8万8,000円(等級1)です。日本年金機構の保険料額表で確認できます。2026年8月23日に確認しました。

役員報酬を月8万8,000円にすれば、社会保険には加入しつつ、保険料は最小になります。会社負担は月1万3,000円ほどです。

役員報酬の額ごとの社会保険の会社負担を並べた棒グラフ
少額にすれば、加入しつつ負担を抑えられます

ここで一つ、抑えることで手放すものにも触れておきます。役員報酬を最低限にすれば、社会保険の負担は小さくなります。

そのかわり、会社から取れる生活費が月8万8,000円しかありません。生活費が足りなければ、役員借入金を返してもらうか、別の収入が必要です。

それに、将来の年金額が小さくなります。厚生年金は払った保険料に比例します。

そして、会社に利益が残れば法人税がかかります。役員報酬を下げた分がそのまま手元に残るわけではありません。

さらに、住宅ローンなどの審査で不利になることがあります。役員報酬が低いと、個人の所得が小さく見えます。

会社設立の費用の相場を下げる話と違って、ここは失うものが具体的で大きい。慎重に決めてください。

それでも、事業の立ち上げ期には有効な選択です。売上が読めないうちは低く設定して、見通しが立ったら上げる。役員報酬は毎期見直せます。

会社設立の費用は一度きりで取り返しがつきませんが、役員報酬は毎年やり直せます。そう考えると、最初から完璧を目指す必要はありません。

出典令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます|都道府県毎の保険料率|保険料率|協会けんぽの事業|協会けんぽについて|協会けんぽ (全国健康保険協会/2026年8月23日確認)

会社設立の直後は、報酬を出さない期間があってよい

会社設立の直後は、報酬を出さない期間があってよいを表したイラスト

会社設立の直後は、売上が立っていないことが多い。その時期に役員報酬を出すのは、資金繰りとして厳しいという判断はあります。

役員報酬をゼロで始めて、事業が動き出してから出す。これは現実的な選択です。

ただし、定期同額給与のルールに注意してください。役員報酬を損金にするには、事業年度が始まってから3か月以内に決めて、そのあと1年間は同額にする必要があります。

つまり、期の途中から役員報酬を出しはじめると、その分が損金にならないことがあります。

  1. 会社設立から3か月以内に、役員報酬をゼロと決める
  2. 1期目はゼロのまま通す
  3. 2期目が始まってから3か月以内に、金額を決める
  4. そこから1年間は同額で出す

この流れなら、問題になりません。1期目をゼロ、2期目から出す。

逆に、1期目の途中で「売上が立ったから報酬を出そう」とすると、損金にならないおそれがあります。

会社設立の費用の相場を調べる段階では、この制約は見えません。設立してから3か月以内に決めなければならないというのは、意外に短い。

そして、決めたら1年間は変えられません。会社設立の費用は払い直せますが、役員報酬は変えられない。

だから、会社設立の前に1期目の役員報酬をどうするかを考えておいてください。

売上の見込みが立たないなら、ゼロで始めるという選択も十分にあり得ます。

その場合、生活費は役員借入金の返済でまかなうという方法もあります。会社設立の費用を立て替えていれば、その分を返してもらえます。返済に税金はかかりません。

会社設立の費用の相場が株式会社で16万円台からだとして、その16万円を非課税で回収できる枠があるということです。生活費の足しにはなります。

出典新規適用の手続き (日本年金機構/2026年8月23日確認)

社会保険に入ることの利点も見ておく

社会保険に入ることの利点も見ておくを表したイラスト

ここまで負担の話をしてきましたが、社会保険には給付があります。避けることだけを考えると、こちらを見落とします。

健康保険には、傷病手当金があります。病気やけがで働けなくなったときに、報酬の一部が支給される制度です。国民健康保険にはありません。

一人会社の経営者にとって、働けなくなったときの収入が途切れるのは大きなリスクです。傷病手当金は、そのときの支えになります。

それから、出産手当金もあります。こちらも国民健康保険にはありません。

  • 傷病手当金病気やけがで働けないときに支給されます
  • 出産手当金出産のために休んだ期間に支給されます
  • 厚生年金基礎年金に上乗せされます
  • 遺族厚生年金・障害厚生年金国民年金より手厚い場合があります

将来の年金も違います。国民年金だけなら基礎年金のみ。厚生年金に入れば、報酬に応じた年金が上乗せされます。

会社負担分の保険料も、将来の自分の年金に反映されます。会社が払っているお金が、自分の年金になります。

一人会社では、会社のお金も自分のお金です。払っているのは自分ですが、受け取るのも自分です。

会社設立の費用の相場を考えるときと違って、社会保険は払いっぱなしではありません。

だから、「社会保険が高いから避けたい」という発想は、片面だけを見ていることになります。

負担と給付を並べて、自分にとってどちらが大きいかを考えてください。

出典一人社長も社会保険の加入義務はある?会社設立時の手続きと必要書類 (弥生/2026年8月23日確認)

加入しないとどうなるか

加入しないとどうなるかを表したイラスト

役員報酬を出しているのに社会保険に加入しない、というのは制度上できません。

法人は強制適用です。日本年金機構が新規適用の手続きを案内しています。2026年8月23日に確認しました。届出は義務です。

加入していないことが判明すると、遡って徴収されます。

役員報酬が月30万円で、1年間未加入だったとします。労使合わせて年103万円ほどを、あとでまとめて払うことになります。

会社設立の費用の相場が株式会社で16万円台からであることを考えると、その6倍です。

社会保険の未加入が判明したときの遡及額を示した棒グラフ
半年でも、会社設立の費用の3倍を超えます

しかも、本人負担分も会社が立て替えることになります。すでに払った役員報酬から後から控除するのは、実務上むずかしい。

会社設立の費用を数万円抑えることに時間をかけるより、この届出を早く出すほうが、金額としてはるかに大きい。

届出そのものは無料です。日本年金機構の様式をダウンロードして、年金事務所に出すだけです。

会社設立の直後は忙しいので後回しにしがちですが、税務署への届出と一緒に片づけてしまってください。

出典新規適用の手続き (日本年金機構/2026年8月23日確認)

まとめ:避けるより、額を設計する

まとめ:避けるより、額を設計するを表したイラスト

一人会社の社会保険について、まとめます。

  1. 法人は、役員が一人でも社会保険の強制適用です
  2. 役員報酬がゼロなら、社会保険料はかかりません
  3. そのかわり、会社から生活費を取れず、国民健康保険と国民年金に入ります
  4. 標準報酬月額の下限は8万8,000円。少額にするという選択もあります
  5. 役員報酬は定期同額給与。会社設立から3か月以内に決めます

会社設立の費用の相場は、株式会社で16万円台から、合同会社で6万円台から。社会保険の会社負担は、報酬30万円なら年52万円ほどです。

加入義務
法人は役員一人でも強制適用
報酬ゼロ
社会保険料はかかりませんが、生活費を取れません
報酬の下限
標準報酬月額8万8,000円。会社負担は年15万円ほど
未加入
遡って徴収されます。半年で会社設立の費用の3倍

避けることを考えるより、額を設計するほうが現実的です。ゼロか満額かではなく、そのあいだのどこにするか。

そして、この設計は社会保険だけでは決まりません。所得税、法人税、将来の年金、住宅ローンの審査。いくつもの要素が絡みます。

会社設立の費用の相場を数万円下げることに時間をかけるより、この設計に時間をかけたほうが、総額では効いてきます。

独学で最適解を出すのは、正直しんどい。任せられる相手を持っておくほうが、結局は安くつくことがあります。

この記事の内容は2026年8月23日時点のものです。制度は改正されます。個別の判断は、必ず社会保険労務士または税理士にご相談ください。

出典厚生年金保険の保険料 (日本年金機構/2026年8月23日確認)

避けるより、設計するほうが現実的です

役員報酬をゼロにすれば社会保険には入りませんが、会社から生活費を取れなくなります。国民健康保険と国民年金に自分で入ることになり、そちらのほうが高くつくこともあります。

現実的なのは、報酬の額を設計することです。避けるのではなく、いくらにするかを考える。そのほうが選択肢が広い。

この記事の内容は2026年8月23日時点のものです。制度は改正されます。出典としてリンクした公表資料で最新の内容を確かめてください。

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