会社設立の初年度の決算でする仕訳。創立費の償却と均等割の計上
この記事は、こういう方に向けて書いています
会社設立から1年近くが経って、最初の決算が近づいてきた方に向けた記事です。日々の記帳はできているけれど、決算で何をすればいいのかがわからない、という段階でしょう。
会社設立の費用の相場を調べていた頃とは、まったく違う場面です。払う話ではなく、1年分をまとめる話になっています。
この記事では、初年度の決算で必要になる仕訳を並べます。金額は2026年8月23日に確認したものです。決算そのものは税理士にご相談ください。
決算でやることは、大きく三つある

会社設立の初年度の決算でやることを、先に並べます。大きく三つです。
- 繰延資産(創立費・開業費)を償却するか決めて、仕訳を入れる
- まだ払っていない費用を、未払として計上する
- 法人税・法人住民税・法人事業税を計算して、計上する
このうち、判断が要るのは1だけです。2と3は、決まった手順で処理します。

順番が大事です。創立費の償却を最初に決めてしまうと、利益が見えたときにやり直すことになります。
会社設立の費用を創立費に入れてある場合、その金額をいつ落とすかは自分で選べます。利益が出ているかどうかで結論が変わります。
だから、利益を確定させてから償却を決める。この順番を守ってください。
会社設立の費用の相場が株式会社で16万円台から、合同会社で6万円台から。その金額が創立費として残っているはずです。
以下、順番に見ていきます。
なお、この記事は株式会社でも合同会社でも同じです。決算と申告の義務に違いはありません。会社設立の費用は合同会社のほうが安く済みますが、設立後の手間は変わりません。
会社設立の費用の相場だけを見て合同会社を選んだ方が、決算の手間まで軽くなると思っていたという話をよく聞きます。そこは変わりません。
出典会社設立の費用を仕訳する方法とは?必要な会計処理を解説 | マネーフォワード クラウド会社設立 (マネーフォワード/2026年8月23日確認)
1.まだ払っていない費用を未払として計上する

決算では、発生しているけれどまだ払っていない費用を計上します。未払費用や未払金という科目を使います。
会社設立の初年度でよくあるのは、3月分の家賃を4月に払う、12月分の給与を1月に払う、といったものです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 地代家賃 | 100,000円 | 未払費用 | 100,000円 |
| 法定福利費 | 45,000円 | 未払費用 | 45,000円 |
※ 金額は例です。実際の金額に置き換えてください。
これをしないと、その期の費用が実際より小さく出ます。利益が過大になり、税金を多く払うことになります。
会社設立の費用の相場を気にして数万円を節約した方が、この計上漏れで数万円の税金を余分に払う。よくあることです。
拾い方は簡単です。決算月の翌月に払ったもののうち、決算月以前に発生していたものを探す。通帳を見れば見つかります。
それから、社会保険料は月遅れで納めます。決算月分の保険料は翌月末が納期です。これも未払計上の対象になります。
社会保険の会社負担は、役員報酬に対しておよそ15%。役員報酬が月30万円なら、月4万5,000円ほどが会社の負担です。
この金額は毎月かかります。年間で50万円を超えます。会社設立の費用の相場が20万円前後だとすると、その2倍以上が毎年出ていく計算です。
未払の計上は、その期の実態を正しく出すための作業です。面倒でも省かないでください。
逆に、まだ発生していないものを先に計上することはできません。翌期の家賃を前払いしても、その期の費用にはなりません。前払費用として資産に計上します。
ただし、短期前払費用の特例があります。支払った日から1年以内に提供を受ける役務で、継続して同じ処理をしている場合は、払った期の費用にできることがあります。要件があるので税理士に確認してください。
会社設立の初年度は、この判断がいくつも出てきます。ひとつずつ調べていると、決算だけで何日もかかります。
出典会社設立時の費用は経費になる?かかる費用と会計処理方法も完全網羅! (はぎぐち公認会計士・税理士事務所/2026年8月23日確認)
2.法人住民税の均等割を計上する

会社設立をすると、赤字でも払う税金があります。法人住民税の均等割です。
均等割は、資本金等の額と従業者数によって決まります。標準税率での下限は年7万円です。総務省が地方税制度の資料で示しています。2026年8月23日に確認しました。
内訳は、道府県民税が2万円、市町村民税が5万円。合わせて7万円が最小です。自治体によって超過課税がある場合もあります。

この図でわかるのは、会社設立の費用より均等割のほうが早く大きくなるということです。合同会社なら、1年目で追い抜かれます。
会社設立の費用の相場を数万円下げることに時間をかける方は多いのですが、均等割の存在を知らない方も同じくらいいます。
仕訳は、租税公課として計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 租税公課 | 70,000円 | 未払法人税等 | 70,000円 |
※ 「法人税、住民税及び事業税」の科目に含める処理もあります。
均等割は損金になります。法人税や法人税割は損金になりませんが、均等割は違います。
ただし、赤字なら損金が増えても税額は変わりません。払う7万円が、そのまま負担になります。
会社設立の初年度が事業年度の途中から始まる場合、月割りになります。8月に設立して3月決算なら8か月分、7万円×8÷12で4万6,600円です。
だから、会社設立の日を決算月の直後にすると、初年度をほぼ12か月使えます。逆に決算月の直前に設立すると、1か月で1期が終わってしまいます。
会社設立の費用の相場を調べるときに、設立日をいつにするかまでは考えない方が多い。ただ、ここで均等割の月数が変わりますし、消費税の免税期間の長さも変わります。
消費税は、資本金1,000万円未満なら原則として最初の2期が免税です。1期目が1か月しかないと、免税の期間が実質的に短くなります。設立日は、思ったより効いてきます。
出典地方税制度|法人住民税 (総務省/2026年8月23日確認)
3.利益が出ていれば、法人税等を計上する

利益が出ていれば、法人税・法人住民税の法人税割・法人事業税がかかります。
法人税の税率は、資本金1億円以下の中小法人の場合、年800万円以下の部分に軽減税率が適用されます。国税庁が税率表を公表しています。2026年8月23日に確認しました。
これに地方税を合わせた実効税率は、おおむね25%から35%の範囲になります。会社の規模と自治体によって変わります。
この記事では、わかりやすさのために実効税率30%として計算します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 法人税、住民税及び事業税 | 900,000円 | 未払法人税等 | 900,000円 |
※ 実際の税額は申告書で計算します。この金額は例です。
そして、ここで創立費の償却をどうするかが効いてきます。利益が出ているなら、償却すれば税額が減ります。
会社設立の費用20万円を創立費に入れてあるなら、それを償却して利益を280万円にできます。税額は6万円減ります。
逆に、赤字なら償却しても税額は変わりません。残しておいて、利益が出た年に落とすほうが得です。
会社設立の費用の相場を調べる段階では見えない判断ですが、ここで数万円が動きます。
なお、赤字の場合は繰越欠損金として持ち越せます。中小法人なら全額を10年間持ち越せます。
それでも繰延資産のほうが期限がないので、償却は後回しにするほうが選択肢が残ります。
なお、法人税や法人住民税の法人税割は損金になりません。払っても、その分だけ課税所得が減るわけではありません。均等割と事業税は損金になります。
この違いは申告書の別表で調整します。会計上の利益と、税務上の所得は一致しません。会社設立の初年度から、この調整が必要になります。
出典No.5759 法人税の税率 (国税庁/2026年8月23日確認)
4.創立費と開業費を償却する仕訳

利益が確定したら、創立費と開業費を償却するかどうかを決めます。
創立費と開業費は繰延資産で、任意償却が認められています。残高の範囲内なら、いくら償却しても構いません。
国税庁は法人税基本通達の第2節で繰延資産の償却期間の取扱いを示しています。創立費や開業費は償却限度額の制限がない扱いです。2026年8月23日に確認しました。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 創立費償却 | 200,000円 | 創立費 | 200,000円 |
| 開業費償却 | 150,000円 | 開業費 | 150,000円 |
※ 償却しない年は仕訳がありません。
償却しない年は、何もしません。貸借対照表に創立費が残ったままになります。それが正しい状態です。
判断の基準はひとつです。利益が出ているなら償却する、赤字なら償却しない。
会社設立の初年度は赤字になることが多いので、多くの場合は償却しないほうが有利です。
一部だけ償却することもできます。利益がちょうど20万円出たなら、創立費を20万円だけ落として利益をゼロにする。そういう使い方もできます。
ただし、均等割は消えません。利益をゼロにしても、年7万円は払います。ここを勘違いしないでください。
損益計算書では、償却費を営業外費用に表示するのが一般的です。会社設立の費用は本業の費用ではないためです。
償却の判断は毎期やり直せます。初年度に0円、2期目に全額でも構いません。
出典創立費の償却方法は?開業費との違いや仕訳・勘定科目、節税効果などを解説 | マネーフォワード クラウド会社設立 (マネーフォワード/2026年8月23日確認)
5.残高を確認して、決算書を作る

仕訳をひととおり入れたら、残高を確認します。ここで間違いが見つかることが多いので、飛ばさないでください。

資本金は、登記事項証明書に書かれている額と一致しなければなりません。ずれていたら、どこかで間違えています。
創立費の残高は、会社設立の費用の合計です。株式会社なら16万円台から、合同会社なら6万円台から。それより小さければ、計上漏れがあります。
会社設立の費用の相場と比べてみてください。明らかに小さいなら、領収書のどれかが帳簿に入っていません。
役員借入金は、立て替えた金額と返した金額の差です。返していなければ、立て替えた金額のまま残ります。
それから、未払法人税等に均等割が入っているか。これを忘れると、翌期に払うときに困ります。
残高が合ったら、決算書を作ります。貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表。この四つが必要です。
会計ソフトを使っていれば自動で作れます。手作業で作るのは現実的ではありません。
そして、決算書をもとに申告書を作ります。ここが一番の難所です。別表の記入は、慣れていないと時間がかかります。
出典資本金はどう仕訳をする?会社設立時にかかる費用の仕訳方法まとめ | 経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識 | クラウド会計ソフト freee (freee/2026年8月23日確認)
申告まで自分でやるか、税理士に頼むか

決算と申告を自分でやるか、税理士に頼むか。会社設立の費用を抑えたい方ほど、自分でやろうとします。
できないことはありません。ただ、初年度は特に時間がかかります。別表の書き方を調べながらだと、何日かかかります。
税理士に頼む場合の顧問料は、年20万円から40万円ほどが目安です。決算だけを頼む場合はもう少し安くなります。
会社設立の費用の相場が株式会社で20万円前後だとすると、顧問料は毎年それと同じかそれ以上かかることになります。
- 自分でやる
- 費用はゼロ。時間が数日かかります
- 決算だけ頼む
- 10万円から20万円ほど。日々の記帳は自分で
- 顧問契約
- 年20万円から40万円ほど。相談もできます
- 設立サポート0円
- 顧問契約とセットのことが多い。条件を確認してください
ここで一つ、抑えることで手放すものにも触れておきます。自分でやれば顧問料はかかりません。
そのかわり、判断の質と時間を手放します。この記事で挙げた論点も、知らなければ通り過ぎます。償却をどうするか、未払をどこまで拾うか。
通り過ぎても脱税にはなりません。払わなくてよかった税金を払うことになるだけです。
それに、設立後に毎年かかる費用の設計は、決算とは別の話です。役員報酬をいくらにするか、社会保険にいつ入るか。こちらのほうが金額が大きい。
均等割は赤字でも年7万円、社会保険の会社負担は役員報酬のおよそ15%。会社設立の費用の相場より、毎年の負担のほうが大きくなります。
その設計を任せられる相手がいるかどうかが、総額では効いてきます。
出典会社設立の税理士費用はいくら?税理士法人に依頼するメリットと相場 (小谷野税理士法人/2026年8月23日確認)
まとめ:利益を確定させてから、償却を決める

会社設立の初年度の決算について、まとめます。
- まず残高を確認する。資本金は登記と一致させる
- まだ払っていない費用を、未払として計上する
- 法人住民税の均等割を計上する。赤字でも年7万円が下限
- 利益が出ていれば、法人税等を計上する
- 最後に、創立費と開業費を償却するかを決める
順番が大事です。償却を先に決めてしまうと、利益が見えたときにやり直すことになります。
- 均等割
- 赤字でも年7万円が下限。月割りになります
- 償却の判断
- 赤字なら償却しない。利益が出た年に落とします
- 未払の計上
- 決算月分の家賃・社会保険料を拾ってください
- 残高の確認
- 資本金は登記と、創立費は領収書と合わせます
会社設立の費用の相場は、株式会社で16万円台から、合同会社で6万円台から。その金額が創立費として残っているはずです。
そして、毎年かかる費用のほうが大きくなっていきます。均等割は年7万円、社会保険の会社負担は役員報酬のおよそ15%。
会社設立の費用を数万円抑えることに時間をかけるより、その毎年の設計に時間をかけたほうが、総額では効いてきます。
この記事の内容は2026年8月23日時点のものです。制度は改正されます。決算と申告は、必ず税理士にご相談ください。
出典第2節 繰延資産の償却期間 (国税庁/2026年8月23日確認)
赤字でも、決算と申告は必要です
会社設立の初年度が赤字でも、決算書を作って申告書を出す義務があります。そして、法人住民税の均等割は払います。赤字でも年7万円が下限です。
これを知らずに「赤字だから何もしなくていい」と考えると、延滞金や加算税が乗ります。必ず期限内に申告してください。
この記事の内容は2026年8月23日時点のものです。制度は改正されます。出典としてリンクした情報で最新の内容を確かめ、判断そのものは税理士にご相談ください。
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