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会社設立 創立費

会社設立の費用を創立費にしたあと、いつ償却するか。任意償却と5年均等償却の選び方

この記事は、こういう方に向けて書いています

会社設立が終わって、創立費として計上した金額をいつ費用にすればいいのかで迷っている方に向けた記事です。最初の決算が近づいてきて、この論点にぶつかった、という段階でしょう。

会社設立の費用の相場を調べていた頃には出てこない話です。払ったあとに効いてくる判断で、しかも、選び方によって払う税額が変わります。

この記事では、任意償却と5年均等償却の違いと、どちらを選ぶかの考え方を整理します。金額は2026年8月23日に確認したものです。実際の判断は税理士にご相談ください。

創立費は、払った年に全額を費用にする科目ではない

創立費は、払った年に全額を費用にする科目ではないを表したイラスト

会社設立でかかった費用を創立費としてまとめると、その金額は貸借対照表の資産の部に載ります。損益計算書ではありません。

違和感があるかもしれません。払ったのに、費用になっていない。払った時点では、まだ費用ではないのです。

これは、創立費が繰延資産として扱われるためです。国税庁は法人税基本通達で繰延資産の意義と範囲を示しています。2026年8月23日に確認した内容です。

繰延資産は、支出の効果が後の期にも及ぶものを、いったん資産として置いておく考え方でした。会社設立の費用は、会社が続くかぎり効いています。だから、払った期だけの費用にはしません。

そして、資産に置いたままでは永久に費用になりません。償却という手続きで、資産から費用へ振り替えていきます。この記事はその話です。

創立費が資産計上され償却されて費用になるまでの流れ図
償却しないかぎり、費用にはなりません

会社設立の費用の相場を調べているときには出てこない論点です。相場は払う金額の話で、これは払ったあとの話。別の話だと思ってください。

ここで判断を間違えても、脱税になるようなことはありません。選び方が下手だと、払わなくてよかった税金を払うことになる。それだけです。

開業費も同じ扱いですこの記事では創立費を例に書きますが、開業費も同じく繰延資産で、償却のしかたも同じです。読み替えて使えます。

では、償却のしかたには何があるのか。二つあります。

会社設立の費用をどちらの方法で費用にするかは、会社が自分で選べます。

出典第1節 繰延資産の意義及び範囲等(法人税基本通達) (国税庁/2026年8月23日確認)

5年均等償却:会社設立の費用を60か月で割る

5年均等償却:会社設立の費用を60か月で割るを表したイラスト

ひとつめが、5年均等償却です。創立費の総額を60か月で割って、その期に属する月数分を費用にします。

たとえば会社設立の費用として20万円を創立費に計上した場合、60で割ると月あたり3,333円。1年分なら4万円です。これを5年かけて費用にしていきます。

創立費20万円を5年均等償却した場合
償却する額 残る繰延資産
1期目 40,000円 160,000円
2期目 40,000円 120,000円
3期目 40,000円 80,000円
4期目 40,000円 40,000円
5期目 40,000円 0円

※ 事業年度が12か月の場合の計算です。設立初年度は月数按分になります。

会社設立の初年度は、たいてい12か月ありません。8月に設立して3月決算なら8か月ですから、その期の償却は3,333円×8か月で2万6,664円になります。

この方法の良いところは、考えなくていいことです。決まった額を毎期落とすだけで、判断が要りません。

悪いところは、赤字の年にも償却が進んでしまうことです。利益が出ていない年に費用を計上しても、税額は減りません。せっかくの繰延資産を、効果のない年に使ってしまいます。

会計のルールに素直に従うならこちらです。上場を目指すような会社では、こちらを選ぶのが基本とされています。

ただ、会社設立の費用の相場が20万円前後という規模の会社で、5年に分けることの意味は正直あまりありません。金額が小さいからです。

年4万円の費用を5年間に分けても、経営判断に影響する数字ではありません。手間だけが5年続きます。

だから中小企業では、もうひとつの方法を選ぶことが多くなります。

出典創立費の償却方法は?開業費との違いや仕訳・勘定科目、節税効果などを解説 | マネーフォワード クラウド会社設立 (マネーフォワード/2026年8月23日確認)

任意償却:会社設立の費用を、好きな年に好きなだけ落とす

任意償却:会社設立の費用を、好きな年に好きなだけ落とすを表したイラスト

もうひとつが任意償却です。繰延資産の残高の範囲内で、いくら償却してもよいという扱いです。

国税庁は法人税基本通達の第8章第2節で繰延資産の償却期間についての取扱いを示しています。創立費や開業費については、償却の限度額が繰延資産の額そのものとされており、結果として金額の制限がありません。2026年8月23日に確認した内容です。

上限がないということは、全額を初年度に落としてもよいし、1円も落とさなくてもよいということです。0円から全額まで、どこでも選べます。

5年均等償却と任意償却を並べた比較図
会社設立の費用をいつ落とすかを、自分で決められます

さらに、60か月を過ぎても償却できます。支出から5年以内に費用にしなければならない、という決まりはありません。繰延資産として残っているかぎり、いつでも落とせます。

これが効いてくるのが、会社設立の初年度が赤字になる場合です。利益が出ていない年に費用を増やしても、税額は減りません。

赤字は繰越欠損金として翌期以降に持ち越せますが、持ち越せる期間には限りがあります。それに対して、繰延資産のまま残した創立費には、期限がありません。

だから、会社設立の初年度が赤字なら、償却しないという選択があり得ます。利益が出た年まで持っておく。そのときに落とせば、その年の税額が減ります。

会社設立の費用の相場が株式会社で20万円前後だとすると、法人税等の実効税率をおよそ30%として、税額にして6万円ほどの差になります。小さくない額です。

ただし、これは利益が出た場合の話です。ずっと赤字なら、どちらを選んでも税額は変わりません。

出典第2節 繰延資産の償却期間 (国税庁/2026年8月23日確認)

赤字の年に償却すると、会社設立の費用が無駄になる

赤字の年に償却すると、会社設立の費用が無駄になるを表したイラスト

任意償却を選ぶ理由をもう少し具体的に書きます。避けたいのは、赤字の年に全額を償却してしまうことです。

会社設立の初年度に売上が立たず、100万円の赤字だったとします。ここで創立費20万円を全額償却すると、赤字は120万円になります。税額はどちらでも0円です。

つまり、20万円の繰延資産を使ったのに、見返りが何もありません。

これを償却せずに残しておけば、翌期に利益が出たときに落とせます。仮に翌期の利益が300万円なら、20万円を落として280万円。税額はその分だけ減ります。

償却する年を変えたときの翌期の税額を比べた棒グラフ
同じ会社設立の費用でも、落とす年で税額が変わります

赤字なら繰越欠損金として持ち越せるから同じではないか、と思われるかもしれません。中小法人であれば全額を持ち越せますし、期間も10年あります。多くの場合は結果が変わりません。

それでも任意償却を勧めるのは、繰延資産には期限がないからです。10年を超えて赤字が続いた場合、繰越欠損金は消えますが、繰延資産は残ります。

それに、繰越欠損金は事業の継続や資本関係の変動によって使えなくなることがあります。制約が多い。繰延資産のほうが素直です。

もうひとつ、この判断で注意することがあります。法人住民税の均等割は、赤字でも払います。年7万円が下限です。創立費をどう償却しても、この7万円は減りません。

会社設立の費用の相場を気にして数万円を節約しても、均等割は毎年7万円かかり続けます。償却の判断で節税できるのは法人税等のほうだけで、均等割には効きません。

この二つを混ぜて考えないでください。片方は一度きり、片方は毎年です。

出典創立費と開業費の税務 – 渋谷区恵比寿で税理士なら粕谷税理士事務所 (粕谷税理士事務所/2026年8月23日確認)

どちらを選ぶか。判断の順序

どちらを選ぶか。判断の順序を表したイラスト

では、実際にどう決めるか。順序で書きます。

  1. 会社設立の初年度が黒字になりそうか、赤字になりそうかを見る
  2. 赤字なら、償却しない(0円)を選ぶ
  3. 黒字なら、利益の大きさを見て、落とす額を決める
  4. 翌期以降も、同じ判断を毎期くり返す

任意償却は毎期ごとに判断できます。初年度に0円で、2期目に全額、という選び方もできます。一度決めたら変えられない、というものではありません。

ここが5年均等償却との一番の違いです。均等償却は最初に決めたら5年続きます。

会社設立の初年度が赤字
償却しない。繰延資産のまま残す
初年度から黒字
利益の範囲で償却する。全額でも構わない
利益が読めない
決算の数字が出てから決めればよい
金額が小さい
初年度に落としてしまってもよい

会社設立の費用が合同会社で6万円台という場合、正直どちらでも大きな差になりません。手間を考えて初年度に落としてしまう、という判断も合理的です。

株式会社で、専門家に頼んで総額30万円を超えたような場合は、判断する価値があります。実効税率30%なら9万円の差です。

会社設立の費用の相場だけを見ていると、この差は見えません。払う金額は同じで、あとの処理で変わるからです。

ここで一つ、抑えることで手放すものにも触れておきます。税理士に頼まずに自分で決算をすれば、その報酬は要りません。そのかわり、こういう判断を全部自分ですることになります。

判断そのものは難しくありません。ただ、判断すべき論点があることに気づけるかが問題です。気づかずに全額償却して、翌年に利益が出て後悔する。それが一番多い失敗です。

決算を自分でやるなら、この記事のような論点を一つずつ拾っていく必要があります。その時間を費用に換算して、頼むかどうかを決めてください。

出典創立費・開業費とは?費用の範囲・会計処理・節税効果を税理士が解説 – Relyne会計事務所 (Relyne会計事務所/2026年8月23日確認)

仕訳と、決算書での見え方

仕訳と、決算書での見え方を表したイラスト

償却するときの処理も見ておきます。創立費償却という科目を使います。

借方に創立費償却、貸方に創立費。資産を減らして、費用を立てる。それだけです。20万円を全額償却するなら、両方に20万円が入ります。

創立費20万円を全額償却したときの仕訳
借方 金額 貸方 金額
創立費償却 200,000円 創立費 200,000円

※ 会計ソフトによって科目名が異なる場合があります。

損益計算書では、営業外費用に表示するのが一般的です。会社設立の費用は本業の費用ではないので、営業損益には入れません。

償却しない年は、仕訳がありません。何もしない、が正解です。貸借対照表に創立費が残ったままになります。

この「資産に創立費が残っている状態」を気持ち悪く感じる方がいます。残しておいて問題ありません。繰延資産として正しい状態です。

ただ、金融機関が決算書を見るときに、繰延資産は資産として評価されにくい面はあります。実質的な資産ではないからです。融資を受ける予定があるなら、そこは意識しておいてください。

会社設立の費用の相場が20万円前後という規模なら、決算書の見え方に影響する額ではありません。気にするほどではない、というのが実際のところです。

それから、税務申告のときには別表に繰延資産の明細を書きます。償却したかしなかったかを、申告書で示します。残高が合わないと指摘されますので、帳簿と一致させてください。

この処理を毎期くり返します。会社設立の費用の話は、残高が0になるまで続きます。

残高が0になったら、その論点は終わりです。あとは通常の経費だけを見ていけば済みます。

出典法人設立時の創立費・開業費とは?/範囲や仕訳・償却期間は? (御影税理士法人/2026年8月23日確認)

会社設立の費用より、設立後に毎年かかる費用のほうが大きい

会社設立の費用より、設立後に毎年かかる費用のほうが大きいを表したイラスト

償却の話をしてきましたが、節税として効く額は、会社設立の費用の何割かです。相場で20万円なら、税額の差は数万円にとどまります。

それに対して、会社設立のあとに毎年かかる費用は、桁が違います。ここを見ておかないと、償却で数万円を最適化しても意味がありません。

  • 法人住民税の均等割赤字でも年7万円が下限。資本金と従業員数で増えます
  • 社会保険の会社負担役員報酬を出すなら、およそ15%前後が会社の負担になります
  • 税理士の顧問料依頼するなら年20万円から40万円ほどが目安です
  • 法人の決算・申告自分でやるなら0円ですが、時間がかかります

均等割の年7万円は、会社設立の費用の相場が合同会社で6万円台であることを考えると、毎年それを超える額を払い続けることになります。

社会保険はもっと大きい。役員報酬を月30万円にすると、会社の負担分だけで年間50万円を超えます。会社設立の費用の2倍から3倍が、毎年出ていく計算です。

この二つは、会社設立の費用の相場を調べている段階では出てきません。設立してから気づきます。

創立費の償却をどうするかは、この設立後の費用の設計と一緒に考えるべきものです。役員報酬をいくらにするか、いつから社会保険に入るか。そちらのほうが金額が大きい。

会社設立の費用を数万円抑えることに時間をかけるより、設立後の毎年の設計に時間をかけたほうが、総額では効いてきます。

そして、その設計は自分で全部やるには論点が多すぎます。任せられる相手を持っておくことが、結局は一番安くつくことがあります。

創立費の償却は、その入口にある小さな判断です。ここで論点の多さを感じたなら、それは正しい感覚だと思います。

出典創立費と開業費とは?繰延資産の範囲と会計や税務上の取り扱いを解説! | ARDOR税理士事務所 (ARDOR税理士事務所/2026年8月23日確認)

まとめ:迷ったら償却しない

まとめ:迷ったら償却しないを表したイラスト

創立費の償却について、まとめます。

  1. 会社設立の費用を創立費にすると、払った年には費用になりません
  2. 償却して初めて費用になります
  3. 5年均等償却と任意償却があり、中小企業では任意償却が一般的です
  4. 任意償却は0円から全額まで自由で、毎期やり直せます
  5. 赤字の年に償却しても税額は減りません。残しておくほうが得です

会社設立の費用の相場を調べていた頃には想像しない論点だったと思います。払った金額と、税額に効く金額は違う。それがこの記事の要点です。

初年度が赤字
償却しない。繰延資産のまま残す
初年度が黒字
利益の範囲で償却する
判断のやり直し
毎期できます。最初に決めきる必要はありません
繰延資産の期限
ありません。60か月を過ぎても償却できます

会社設立の費用そのものは、株式会社で16万円台から、合同会社で6万円台から。この金額をどう扱うかで、数万円の税額が動きます。

そして、設立後に毎年かかる費用はそれより大きい。均等割は赤字でも年7万円、社会保険の会社負担は役員報酬に対しておよそ15%。こちらは毎年です。

会社設立の費用の相場と、設立後の費用。両方を見ておかないと、判断を誤ります。

この記事の内容は2026年8月23日時点のものです。制度は改正されます。個別の判断は、必ず税理士にご相談ください。

出典第2節 繰延資産の償却期間 (国税庁/2026年8月23日確認)

急いで償却しないでください

会社設立の初年度は、赤字になることが珍しくありません。そこで創立費を全額償却してしまうと、赤字がさらに深くなるだけで、税額は1円も減りません。

繰延資産のまま残しておけば、利益が出た年に落とせます。慌てて費用にする理由はどこにもありません。これが任意償却の一番の使いどころです。

この記事の内容は2026年8月23日時点のものです。制度は改正されます。出典としてリンクした国税庁のページで最新の内容を確かめ、判断そのものは税理士にご相談ください。

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